研究概要 |
本年度はPAFの気道上皮細胞の粘液線毛輸送系に対する細胞内作用機序を明らかにするため、その受容体情報伝達機構について検討した。昨年度の結果よりPAFが気道上皮細胞の細胞内カルシウムの一過性の増加とそれに続く持続性の増加の二相性の反応をひきおこすことが明らかとなったため、細胞内カルシウムの遊離を促すイノシトール3燐酸(IP3)レベルを測定した。方法は[3H]-IP3によるcompetitive protein binding assayを用いた。その結果、PAFはIP3の一過性の上昇をもたらし細胞内カルシウムの一過性の増加とtime-courseが一致した。このことよりPAFはIP3の上昇を介して細胞内貯蔵部位からのカルシウムの遊離をもたらすことがわかった。また細胞内カルシウムの上昇はphospholipase A2の活性化を促しprostaglandinの産生に影響すると考えられたため、PAF刺激後のprostaglandinE2,F2αのレベルをRIAを用いて測定した。その結果、PAFは有意のProstaglandin E2,F2αの上昇をもたらした。以上よりPAFはPAF受容体を介し、phospholipase Cの活性化によりIP3を産生し細胞内貯蔵部位からのカルシウム遊離をもたらし、さらにphospholipase A2の活性化を介してprostaglandinの産生を引き起こし、これがイオントランスポートなどの気道上皮細胞機能に影響を与えることがわかった。
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