研究概要 |
本年は亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と進行性多巣性脳症(PML)剖検脳での病巣形成にサイトカインがどのように関与しているかを免疫組織化学法を用いて検索した。SSPEではウイルス抗原の存在する部位には多数の浸潤細胞が存在し、同時にIL-1,IL-6,TNF-αなどの陽性細胞が多数検出された。細胞種類は浸潤リンパ球やグリア系細胞であった。また、PMLではJCウイルス抗原の存在する部位にはリンパ球はほとんど検出されなかったが、多数のマクロファージでIFN-γ,TNF-α,IL-6陽性所見が見られた。これらの結果から、これらのスロー・ウイルス感染症脳内ではウイルス抗原が持続的に産生された部位ではこれらのウイルス抗原に対して宿主免疫反応が惹起され、種々の細胞反応と同時にサイトカインが産生され、病巣形成に深く関与していると考えられた(Neurology:in press)。 さらに中枢神経感染症でのサイトカインがどのように関与しているかを明らかにするために患者髄液細胞の免疫組織化学法により検索した。ウイルス感染症の急性期では髄液細胞増多が見られ、リンパ球系細胞ではIL-6,IFN-γ陽性細胞が10-25%、化膿性髄膜炎でも急性期および亜急性期にはマクロファージでTNF-α陽性細胞が多数出現した。これらの結果から中枢神経感染症髄液腔内では多数の浸潤リンパ球とマクロファージからサイトカインが産生され、病巣形成に深く関与していると推測された(臨床神経)。
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