平成5年度に、我々は当初の予定通り測定系を確立し、各種神経変性疾患について検討してきた。Neural thread protenの脳脊髄液中の濃度測定については残念ながら、鑑別診断に有用でなかった。今回の検討は病的タウ陽性の構造物が数多く出現する進行性核上性麻痺とほとんど認めないパーキンソン病(しかしながらAlzheimer病を合併し、痴呆症状を呈するとタウ陽性異常構造は増加する)との間でおこなった。その結果進行性核上性麻痺の患者についてはその運動症状の重障度とNeural thread proteinの濃度が相関し、パーキンソン病については痴呆症状と関連していたが、両疾患の鑑別には至らなかった。 一方脳脊髄液中の補体蛋白濃度(C4d)については鑑別診断上有用であることが明らかになった。同様に進行性核上性麻痺の症例とパーキンソン病の患者について検討したが、明らかにその濃度に有意差が認められた。特に脳血液関門の障害による血液から脳内への蛋白の侵入に考慮して、lgGindex等と同様にC4d indexを求めて検討した(血液、髄液中のアルブミン濃度を同時測定して計算)が、これでも両疾患は明確に分けることができた。現在は他の疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症や末梢性の脱髄疾患についても検討中であるが、同様な有用性が得られつつある。C4dについては、抗体の感度が良く上記の結果が得られたが、C1qについては感度上も弱く、かつ有意な差を認めることができなかった。
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