伴性劣性遺伝性神経疾患の中で副腎白質ジストロフィー(Adrenoleukodystrophy:以下ALDと略)については研究代表者らは従来より生化学的診断法の確立ならびに脂肪酸代謝を中心とした化学的研究を進めてきており、皮膚繊線芽細胞、リンパ芽球などの細胞株を多数有しているためその遺伝子解析重点的に行い研究を進めた。ALDの原因遺伝子に関しては1993年フランスのMandelらのグループによりその原因遺伝子として有力と考えられるALDP geneが単離された。研究者らは彼らとの共同研究により日本人ALD患者においてこの遺伝子の異常が存在するかどうかを検討する目的でサザン解析を行い43家系中3家系で互いに重なりのない部分欠失があることを見出し本遺伝子がALDの原因遺伝子であることを確認した。さらに欠失の認められなかった例に関してはDNAシークエンサーを用いた直接塩基配列決定法を確立し、ALD患者において数ヶ所の点変異を検出した。さらにPCR法を用いてこれらの点変異の簡便なスクリーニング法を確立し、ALDの遺伝子診断法を確立しつつある。また各臨床亜型と遺伝子変異との対応についても検討し両者の間には一定の関連性のないことも明らかにした。 一方他のX染色体に存在する神経疾患の遺伝子の単離に向けてXq24-28領域より多数のコスミドクローンを単離し、cDNAライブラリーをスクリーニングし、数個のcDNAを単離した。この中にはALDP geneの全長を含むクローンも認められた。今後はこのクローンを用いてALD患者の培養細胞に導入しその遺伝子の機能を明らかにしていく予定である。
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