研究概要 |
アルツハイマー型痴呆(DAT)の病因にフリーラジカル除去機構の異常が想定されているが、系統だった検討はなされていない。近年老化と関連があり、また21番染色体上に位置していることより、superoxide dismutase(SOD)異常が注目されている。昨年我々はDAT患者皮膚線維芽細胞においてSOD濃度を測定したところ、異常を示すことを確認した。しかし、その異常の機序は明らかでない。今回我々は、DAT患者皮膚線維芽細胞においてSODmRNAの発現を検討した。 [対家と方法]65才未満で発症したアルツハイマー病(AD)7例、(年齢61.6±2.8才)、65才以上で発症したアルツハイマー型老年痴呆(SDAT)12例、(年齢72.8±4.2才)、脳血管性痴呆(MID)9例、(年齢72.3±5.9才)、年齢を一致させた若年対象群(CTL1群)7例、(年齢59.1±4.5才)、老年対照群(CTL2群)12例、(年齢70.9±3.6才)を対象とした。皮膚線維芽細胞は患者及び家族の同意を得た後、上腕皮膚より採取し培養した。グアニジン法にてRNAを抽出し、Northern blot解析を行った。統計処理には、Wilcoxon順位和検定を用いた。 [結果]皮膚線維芽細胞中SOD mRNA発現比は、AD群0.85±0.18,CTL1群0.50±0.19,SDAT群0.17±0.14,MID群0.35±0.22,CTL2群0.47±0.18であった。AD群でCTL1群に比較して統計学的に有意に高値を示し(p<0.05)、SDAT群ではCTL2群に比較して有意に低値を示した(p<0.05)。MID群は有意な変化を示さなかった。 [まとめ]皮膚線維芽細胞中のSOD mRNA発現は、ADで高値を示し、SDATで低値を示すことが分かった。これは、我々が以前検討したSODの蛋白レベルでの結果とよく一致した。このことから、皮膚線維芽細胞中のSOD異常はmRNAレベルで起っていることが分り、また皮膚線維芽細胞中のSODを検討することがDATの診断に役立つ可能性が示された。
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