研究概要 |
特徴的な臨床症状,血液・髄液所見ならびに末梢神経伝導検査または腓腹神経生検の脱髄所見をもとに20例の慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者が診断された.これらの患者血清を用いて末梢神経系のガングリオシドに対する抗体活性を,マイクロタイタープレートを用いた免疫酵素抗体法を用いて測定した.その結果,6例で抗GM1抗体が,3例で抗GD1b抗体が,2例で抗GD1a抗体が陽性であった.本症において抗GM1抗体がみられることが報告されているが,本研究においても同様の結果であった.しかし,抗GM1抗体陽性患者において,その他の陽性となった抗ガングリオシド抗体の組合せは個々の症例で異なっていたことから,各症例の抗原決定部位は微妙に相違していることが示唆された.なお,その他の原因による末梢神経障害または神経原性筋萎縮症患者においては抗ガングリオシド抗体の出現頻度は低く,抗ガングリオシド抗体にある程度の疾患特異性が認められ,抗ガングリオシド抗体と慢性炎症性多発神経炎の病因・病態との関連が示唆された.次に,患者血清の培養神経系細胞に対する免疫反応性を検討する目的で,神経系細胞の培養を行なっている.すなわち,後根神経節細胞やシュワン細胞の培養は,幼若ラットの後根神経節を用いて,神経成長因子を添加した培地で,poly-L-lysineで被覆したカバースリップ上で得た.後根神経節細胞は抗ニューロフィラメント抗体陽性で確認する.シュワン細胞は抗ガラクトセレブロシド抗体陽性,抗フィブリノレクチン抗体陰性で確認した.それぞれの神経系細胞の純粋培養はDNA合成阻害薬を用いて,その投与量と投与間隔の設定を行なっている.
|