ヒト脳脊髄に存在する変異型HTLV-Iの生物学的活性と局在からみた神経障害機構

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670562
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 吉良 潤一 九州大学, 医学部, 講師 (40183305)
• キーワード: ヒトT細胞性白血病ウイルス / polymerase chain reaction / HTLV-I関連脊髄症 / 中枢神経組織 / HAM / 変異型ウイルス / ELISA / 抗HTLV-I抗体

研究概要

HTLV-I-associated myelopathy(HAM)患者剖検脳脊髄に存在するHTLV-IゲノムのpX領域遺伝子約1.6kbの塩基配列を決定し、多数の変異を見い出した。この領域にはウイルス遺伝子や宿主細胞の遺伝子の発現を調節するtax蛋白、rex蛋白という重要な調節蛋白がコードされている。神経組織に存在するHTLV-Iゲノムの約1/4はtaxまたはrex蛋白がdefectiveとなる変異を伴っていた。このようなdefectiveな蛋白がin vivoで発現している可能性を調べるために、変異型taxまたはrex蛋白の変異部分に相当するアミノ酸配列を合成し、これを抗原としてenzymelinked immunosorbent assay法にて、変異蛋白に対する抗体の有無を検索した。HAM患者では、42例中11例で変異蛋白に対する抗体が陽性であった。HAM以外のHTLV-Iキャリアーでは25例中2例、HTLV-I陰性者では40例全例陰性だった。このことはHAM患者および一部のHTLV-Iキャリアーでは変異型taxまたはrex蛋白がin vivoで発現しており、何らかの病的意義をもつことを強く示唆している。

研究成果

• [文献書誌] Kira,J.: "Sequence heterogeneity of HTLV-I proviral DNA in the central nervous system of patients with HTLV-I-associated myelopathy" Annals of Neurology. 36. 149-156 (1994)
• [文献書誌] Kira,J.: "The presence of HTLV-I proviral DNA in the central nervous system of patients with HTLV-I-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis" Mol.Neurobiol.8. 139-145 (1994)
• [文献書誌] Kira,J.: "Recurrent opticomyelitis associated with anti-DNA antibody" J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry. 57. 1124-1125 (1994)
• [文献書誌] 吉良潤一: "レトロウイルスと神経障害" 臨床神経学. (in press). (1994)