研究概要 |
私共は最近,特異な臨床病理像を呈する遺伝性糖脂質蓄積症を世界で初めて見出し,"A new syndrome associated with β-glucocerebrosidase deficiency and a mosaic population of storage cells"と題して報告した(Acta Neurol Scand 1992;86:407-420)。本疾患は最新版(第11版)のMcKusickにて,従来のGaucher病と区別され,231005:Gaucher-like disease(Pseudo-Gaucher disease)として新しく登録された。昨年度は既知のライソゾーム酵素を可能な限り測定し、本疾患の多酵素欠損症の可能性を検索した。本年度は、-80℃凍結膵組織を用い、Constantopoulosら(J Neurochem,1976)の方法に従いglucosaminoglicans(GAG)の分離定量を試みたが、疾患対照および正常対照に比較して有意な増量は認められず、α-L-iduronidase,iduronate sulphate sulphatase,heparan-N-sulphataseの活性低下も認めなかった。従って、その他の関連諸酵素の分析は試みなかった。臓器蓄積糖脂質の分析上、Gaucher病との有意な相違がないか、発端者のホルマリン固定の肝と膵の組織を用い、再度thin-layer chromatographyを行ったところ、glucosylceramideの有意な増量の他に、微量ながら、lacto sylceramideの増量が認められ、同時に疾患対照として測定したGaucher病患者の結果と相違がみられた。今後、他の保存臓器と発端者に関しても検討を加える予定である。未知のfibrosis accelerating factorの検索に関しては、適切な疾患コントロールの試料が収集不十分であったので、来年度検討を加えることにした。また、β-glucocerebrosidase geneのmutationの検討も継続し、検索を進めていく予定である。
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