研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)7例,上位運動ニユーロンおよび皮質脊髄路変性を伴わない下位運動ニユーロン疾患(LMND)4例および対照12例を用いて、脊髄前角細胞から直接突出する軸索すなわちaxonhillock(AH)およびinitial segment(IS)におけるシナプスの変化を電顕で検索した。剖検はいずれも6時間以内に行われた。剖検時、各症例の腰髄(L4-5)を水平断で切り出し、2%グルタールアルデハイドで固定、型の如く処理した後、エポンで包埋した。約1mumの薄切切片にトルイジンブルー染色を施して光顕で観察し,前角細胞から直接出る軸索を確認した後、超薄切片を作成し、酢酸ウラニウムとクエン酸鉛の二重染色を施して電顕で観察した。近位部軸索(AHおよびIS)の表面に接して存在する各シナプスを倍率20000で写真に撮り、最終倍率38000まで引き伸ばし、シナプスの数、各シナプスの全長およびactivezoneの長さをKontron computerizec image analyzerで測定した。前角細胞から直接突出する軸索は、対照例で87本、運動ニューロン疾患(MND)例(ALSおよびLMND)で83本認められた。AHにおけるシナプスの数、シナプスの全長およびactive zoneの長さの平均はいずれもMNDでは対照例に比較して有意に減少していた(p<0.01).ALSとLMNDの間ではこれらのパラメータに差は見られなかった.他方,ISにおけるこれらのパラメータに関しては、MNDと対照例の間で差が認められなかった.これらの所見は,MNDではその病初期から近位部軸索に入るelectrical inputが障害される結果、軸索の機能障害が生じ,運動機能に重大な影響を及ぼしていることを示唆している。また,シナプスの障害は、前角細胞の変性に基づく一次的な変化によるものと思われる.
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