研究概要 |
1.対象:筋萎縮性側索硬化症(ALS)23例、ALS以外の神経疾患(non-ALS)31例、非神経疾患のコントロール37例の腰仙髄である。Non-ALSの内訳は、変性疾患10例、脱髄性疾患3例、感染症疾患5例、腫瘍性疾患6例、その他7例である。 2.方法:各症例の腰仙髄より4μmのパラフィン切片を作成し、一次抗体はポリクロナール抗ユビキチン(Ub)抗体(Sigma,USA)を用い、avidin-biotin complex法にて染色した。Counterstainingは、メチルグリーンにて行った。 結果:ALSでは、前角の神経細胞に、1)繊細な糸状の形態を有するskein-like inclusion body、2)円形封入体ないしdense body(HE染色ではレビ-小体様封入体)、3)顆粒状封入体、の3種類のUb陽性封入体が認められた。Skein-like inclusion bodyは、23例中19例のALS、31例中1例のnon-ALSにみられたが、コントロール例では見い出せなかった。ALSにおけるskein-like inclusion bodyの頻度は、non-ALS例およびコントロール例よりも有意に高かった。(p<0.01)。なお、skein-like inclusionが認められたnon-ALSの1例は、末梢神経のリンパ腫浸潤により脊髄前角細胞にcentral chromatolysisのみられた症例であり、封入体はALSの繊細な糸状のものに比べて粗であった。免疫電顕上、ALS例に認められた顆粒状封入体とnon-ALS例にみられたskein-like inclusionは、ALSのskein-like inclusionに類似した構造を呈していた。 4.考察と結論:本研究のように、多数のnon-ALS例を検索した報告は稀であるが、我々が検索した封入体の頻度からみても、Ub陽性skein-like inclusion bodyはALSに特徴的な異常であり、これはこれまでの報告を更に裏づけるものであった。類似した封入体はnon-ALSの1例にもみられたが、免疫組織化学染色上、封入体の性状が異なっていた。なお、non-ALSにみられたUb陽性封入体の電顕的検索は、これまで報告されていないものである。
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