研究概要 |
平成5年度におては脳血管性痴呆及びアルツハイマー型痴呆における神経ペプチドの病態生理学的意義を検討するため、脳血管性痴呆(VD)及びアルツハイマー型痴呆(DAT)の脳脊髄液(CSF)中の神経ペプチド(endothelin,-human atria natriuretic peptide(hANP),calcitonin gene related peptide(CGRP))濃度を各々のラヂオイムノアッセイ法で測定して両疾患の病態との関連について観察した。VD 43例、DAT 38例及び神経疾患や内分泌疾患を認めなかった対照群36例を対象に腰椎穿刺にてCSFを採取した。対照群においてはCGRP,-hANP,endothelinの濃度に年齢や性による差異は見られず、得られた値の評価に際してはこれらの因子を考慮しなくても良いことを認めた。CSF中の-hANP濃度は対照群に比してDATでは有意に低値であったが、VDでは対照群と同様な値であった。CGRPはDATでは対照群と同様であったが、VDの糖尿病等の合併症を有する者では有意に低値であった。endothelin濃度はDAT,VD共に対照群との間に差異をみとめなかった。leukoaraiosis(白質病変)とこれらのペプチド濃度との関連ではVDではleukoaraiosisの程度が増すに従ってCSP中の-hANP濃度が増加する傾向が見られたが、CGSPは逆に低下する傾向が認められた。しかしDATでは一定の関連は認めなかった。VDでは前頭葉のCT numberとendothelin濃度との間に正のの相関が、尾状核のCT numberとCGRP濃度との間に負の相関が認められた。この様な結果とCSF中のペプチド濃度は中枢神経系のペプチド濃度をある程度反映するるとの報告やこれらのペプチドの作用を考え合わせるとこれらペプチドの変化が両疾患の病態を反映しているものと考えられた。
|