研究概要 |
脳血管性痴呆(VD)及びアルツハイマー型痴呆(DAT)に於ける神経ペプチドの病態生理的意義を明らかにするため、両疾患の脳脊髄液(CSF)中神経ペプチド濃度を測定した。CSF中のalpha-hANPはDATで有意に低く、VDの糖尿病合併例でCGRPが低値であり、CRH,substance P及びVIPは両疾患で低い傾向が見られた。この結果とこれらのペプチドが中枢神経系に高濃度に存在し、種々の作用を発現していることを考え合わせると両疾患の病態に多くの神経ペプチドが関与していることが示唆された。また、ペプチドの作用機序を明らかにするため、TRHとsomatostatin(SS)の受容体の生体内分布を免疫組織学的手法で検討した。まずTRH受容体(TRHR)及びSS受容体(SSTR)type1とtype2に特異的な抗体を作成した。これらの抗体を用いて間接免疫組織抗体法でラットの生体内分布を観察したところ、TRHR,SSTR type1 type2共にラットの生体内に広く分布することを認めた。さらに、人下垂体前葉や脊髄にこれらの受容体が存在することを認めた。TRHRの分布が見られた部位はTRHの存在するが知られている部位である。さらにSSTRの両受容体を認めた部位は従来よりSSの存在が報告されている。従って、TRHやSSはこれらの部位でparacrineまたはautocrine的に作用していると考えられた。また以上の成績は本研究で開発した方法がTRH,SSと痴呆との関連を受容体の変化から検討する上で有用な手段であることを示している。
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