中枢神経系でのインシュリン様成長因子II(以下IGFIIと略)の生理的役割及びその標的細胞を明らかにする為、本因子のコリン作動性ニューロンに対する作用及びIGFII受容体分布を検索した。その結果、1)IGFIIはアセチルコリン合成酵素(ChAT)活性や神経突起伸展を著しく増加させ、コリン作動性ニューロンの分化・生存促進効果をもつことが判明した。2)このIGFIIの効果IGFII受容体を介して直接コリン作動性ニューロンに作用し、またその作用機序は従来の神経栄養因子と異なっていた。3)IGFII受容体は皮質錐体細胞、海馬・歯状回、線条体、黒質及び小脳プルキニエ細胞等の特異的ニューロンに高い発現が見出され、その標的細胞スペクトラムがかなり広いことが明らかとなった。中枢神経系でIGFIIの高い発現が維持されることから考えると、以上の結果はIGFIIがニューロンの分化・生存のみならず機能維持や可塑性にも重要な役割を果たしていることを示唆している(投稿中)。
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