研究概要 |
ミトコンドリア脳筋症の三大病型のうち、MELAS(mitochondrial myopathy,encepha lopathy,lactic acidosis,and stroke‐like episodes)の二つの点変異は、すでにわれわれが発見し報告している(NATURE 1990;348:651‐653,Biochim Biophys Acta 1991:1097:238)。今回はさらに、肝障害を伴うMELASの一家系に、新しい点変異(3291:T→C)を発見した。この変異もまた、前二者と同じロイシン転移RNA遺伝子の中に存在し、MELASとこの遺伝子との密接な関係がさらに明らかにされた。また、オーストラリアの研究グループから第三のMELASの変異として報告されていた点変異(11084:A→G)は、正常日本人の14%に存在する他型(polymorphism)であることを示し、その病因的意義の疑わしいことを報告した。 MELAS患者の80%に存在する3243変異は、時に全く違う臨床病型である慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO)でも認められる。われわれは、このような例外的なCPEO患者において、3243以外の部位に新たな挿入変異を発見し、その病因との関係を検討した。 以上のような、新しいミトコンドリア脳筋症の遺伝子異常の発見の成果に比し、モデル動物の作製は困難な問題に直面している。今年度は、遺伝子異常をもった塩基配列4種類をそれぞれ別のプラスミッドにクローニングするところまでに留まった。
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