研究概要 |
ミトコンドリア脳筋症の三大病型のうち、MFLAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)については、三つの遺伝子異常を発見した(Nature 1990;348:651, Biochim Biophys Acta 1991;1097:238, Biochem Biophys Res Commuu 1994;202:1624).それらがすべて、ロイシン転移RNA遺伝子領域に存在することから、この遺伝子とMELASとの密接な関係が明らかになった。しかしその詳細はわかっておらず、ミトコンドリア変異遺伝子のinvitro発現システムを構築するのが、今後の重要な課題である。 またMELAS患者の80%に存在する3243変異は、母系遺伝をとる糖尿病の家系でも認められることが判明し(N Engl J Med 1994;330:962)、ミトコンドリア遺伝子異常症の広がりは、当初の予想をはるかに越えている。ミトコンドリア遺伝子型と表現型の関係は、核DNAに比して格段と複雑であることが明らかとなった。 本研究課題の柱であるトランスジェニックマウスの開発については、変異遺伝子をいかにしてミトコンドリア内に導入するかという問題をこの研究期間では解決できず達成されていない。ミトコンドリア遺伝子がミトコンドリア内のどこに存在し、どのように転写・複製されるのかなどの基礎的事項も不明の点が多く、核DNAに用いられている方法を簡単に適用することは困難であった。この点を解決する新しい方法論が必要である。
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