研究概要 |
雄砂ネズミを用いて実験を行なった。先ずペントバルビタール麻酔下に右大脳皮質に限局性の脳梗塞を作成した。梗塞作成1,3,7日後に2.0%ハロセン、30%酸素プラス70%窒素混合麻酔下に5分間の前脳虚血負荷を加え、その1週間後に脳を灌流固定して組織学的検討を行なった。その結果、梗塞1または3日後に前脳虚血を負荷した群では、左半球の海馬CA1細胞は広範囲な壊死を示すが、右半球の海馬CA1細胞は正常形態を示すものが多く、特に梗塞直下の細胞の大半は壊死から免れていた。一方、梗塞7日後に前脳虚血を負荷した群では、両側半球の海馬ともこのような保護作用は見られなかった。大脳皮質梗塞後に海馬にheat shock protein(HSP)が誘導され、これが保護作用に関係するか否かを検討するため、梗塞3時間後から7日後までのHSP72 mRNAの発言をin situ hybridization法を用いて検討したが、海馬CA1領域にHSP72 mRNAは発言しなかった。次に梗塞1,3,7日後の反応性astrocyteの出現を免疫染色(GFAP)を用いて検討したところ、梗塞3,7日後に梗塞直下の海馬CA1領域に著明な反応性astrocyteの出現が見られた。以上より、大脳皮質梗塞1-3日後の急性期には梗塞周囲の神経細胞は虚血性負荷から保護されること、その機序にはHSP72以外の因子が関与することが示唆された。
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