本年度において、前処理カラムの使用により、健常人ヒト血清から短時間で安定したα_1酸性糖蛋白を効率よく単離出来た(電気泳動で確認)。ついでHPLC法(ハイドロキシアパタイトのカラム使用)により分画に分けたところ4つに分けられた。これら4つの分離取得した蛋白が確かにα_1酸性糖蛋白であることを免疫化学法で確認できた。したがって4種類の分子種から本蛋白は構成されているものと思われる。また健常人と心不全患者において、α_1酸性糖蛋白の薬物結合蛋白としての働きをスキャッチャード・プロットにより、結合部位の数や結合能を検討した。心不全患者のα_1酸性糖蛋白においてジソピラミドの結合部位数が有意に減少したが、結合能には変化がなかった。これは質的に異なった蛋白の出現を示唆する結果として考えられ、異なった分子種の出現と思われる。また心不全患者において、心不全増悪期にα_1酸性糖蛋白の血中濃度が増加し、回復と共に減少し元に戻る事を報告したが、減少しない患者もあることが分かってきた。いかなる理由によるか不明である。今後の検討を要する。今後分取したα_1酸性糖蛋白は、健常と心不全ではどのような生化学的変化による分子種の変化なのか、電気化学検出器とHPLCとを組み合わせ、グリカナーゼ処理して得た糖の組成分析をし、その構成を検討したい。
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