前処理カラムの使用により、健常人ヒト血清から短時間で安定したα_1酸性糖蛋白を効率よく単離出来た。ついで心不全のモデルとして急性心筋梗塞の患者を用いて以下の検討をした。α_1酸性糖蛋白は心筋梗塞発症4〜5日後に血中濃度は最高になり、以後経時的に減少し、2週間後もとの値に戻る。この際単位α_1酸性糖蛋白当たりの抗不整脈薬ジソピラミドの結合量は、心筋梗塞発症4〜5日後最低になり2週間後もとの値に戻ることがわかった。従って梗塞発症4日目と4週間後の血液で次の点を比較した。まずα_1酸性糖蛋白の薬物結合蛋白としての働きをスキャッチャード・プロットにより、結合部位の数や結合能を検討した。梗塞発症4日目のα_1酸性糖蛋白においてジソピラミドの結合部位数が有意に減少したが、結合能には変化がなかった。この時のα_1酸性糖蛋白を構成している糖(シアル酸・フコース・Nアセチルグルコサミン・ガラクトース・マンノース)の組成を検討した。フコースは有意な変化はなかったが、他の糖は有意に増加していた。これらの成績は、病態時には通常とは異なったα_1酸性糖蛋白が生成され、薬物の蛋白結合にも影響を与えているものと推測された。またHPLC法によりα_1酸性糖蛋白を分画に分けたところ4つに分けられ、これら4つの分離取得した蛋白がα_1酸性糖蛋白であることを免疫化学法で確認できた。したがって4種類の分子種から本蛋白は構成されているものと思われる。今後心不全時のα_1酸性糖蛋白の変化は、4つに分けられた構成要素の比率の違いによるものなのか検討を要する。
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