研究概要 |
cytokine(i.e.,腫瘍壊死因子(TNF))は心不全における病状の進行や心血管系の構築変化に重要な役割を担っていると考えられる。TNFのレセプターには2種類(TNF RI & RII)あり、細胞膜に存在しTNFの作用を発現する。これらのレセプターの細胞外ドメインは種々の刺激により切離され血中に溶解(soluble TNF RI & RII)しており、TNFと結合することによりTNFの働きを抑制していると報告されている。TNF及びその可溶性レセプターと心不全との関連性について検討した。 【方法】心不全患者23例および正常16例。得られた血清を-70℃で保存し、Enzyme-Linked Immunoassay法(ELISA法)によりTNFα、soluble TNF-RI、soluble TNF-RIIの血中濃度を測定した。 【結果】TNFαは健常群が3.9pg/ml、心不全群が6.4pg/mlと心不全群で高値の傾向があった(p<.08)。soluble TNF-RIは正常例(平均596pg/ml)に比し心不全群(平均1745pg/ml)で上昇していた(p<.001)。soluble TNF-RIIも正常例に比し心不全例で上昇していた(平均2095 vs 3346pg/mlp<.05)。 【考案】TNFαは組織局所において主に単核球より産生され、炎症の進展やcachexiaの出現に重要な役割を演じていることが明らかにされている。TNFは心不全患者において増加していることが報告(バイオアッセイ)されているが、我々の検討においても増加している傾向があったものの有意性は認められなかった。しかしながら、TNFαは組織局所において産生され作用を発現しており、血中のTNFα濃度が直接的に病態と関連しない可能性がある。一方、TNFレセプターはin vitroの検討によると種々の刺激により細胞外ドメインが切離されることが知られている。切離された細胞はTNFαの作用が発現しない。また血中に溶解したTNFレセプターの細胞外ドメインはTNFと結合することで、TNFの作用を失活させると報告されている。可溶性TNFレセプター(soluble TNF RI & RII)は健常人および心不全患者の流血中に存在し、心不全患者で高濃度であった。心不全患者において可溶性TNFレセプターは局所においてTNFの作用を減弱し、cachexiaなど心不全症状の悪化を防御していると考えられた。
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