研究概要 |
致死性不整脈モデルとして早期後脱分極(EAD)によるTriggered activityを発生するアコニチン誘発性不整脈を用いてinvivo,invitroでMg^<2+>及び抗不整脈剤の効果を検討した。(1)家兎の心房、His束、心室より記録した局所心電図を下に、アコニチン灌流で発生した細動に対する除細動効果をみると3mM Mg^<2+>以下ではなく、5mM以上で認められ、しかもこの効果はTTXの場合に類似していた。一方、リドカイン、フレカイナイド、ベラパミルなどの抗不整脈薬には除細動効果は認められず、規則的な頻拍状態に戻すのみであった。さらに5mM Mg^<2+>には細動の予防効果を認めた。(2)invitroの単一心室筋でもアコニチンは活動電位再分極相を延長してEADを発生させた。5mM Mg^<2+>以上でEADを有意に抑制したが、抗不整脈薬はEADを抑制せず活動電位の回復も認めなかった。EADに対するMg^<2+>の抑制機序はアコニチンがもたらす内向きhump電流(window電流)を減少させることによった。抗不整脈薬にはその効果は弱くアコニチン不整脈に対しても同様であった。膜電位、膜電流に対するMg^<2+>イオンの効果は濃度によって異なり、3mM以下では活動電位持続時間(APD)は延長し、逆に3mM以上では短縮した。このAPDに対する2相性変化はK電流の抑制効果とCa電流のピーク値及びその不活性化過程への効果の差異によった。高マグネシウムがAPDを短縮することはアコニチン以外のEADによる致死的不整脈にも有効である。アコニチンの不整脈発生過程にプラトーの短縮を認めたが、これが細胞内Na負荷により活性化されるK電流の寄与が示唆された。(3)Naチャネル電流へのアコニチン効果はcell attach patchの方法では細胞膜の興奮状態を作成することが十分でなくデータを得るに至らなかった。以上の結果を国際心電学会、日本循環器学会、日本生理学会にて報告した。以上より高濃度Mg^<2+>が活動電位再分極相遅延により生じる重症不整脈の改善に有効であることを明らかにした。
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