虚血性心疾患患者および正常者より早朝空腹時採血し、血中脂質値およびアポ蛋白値を測定すると共に、血漿より高速超遠心を繰り返すことによって低比重リポ蛋白(LDL)分画を単離した。LDLには種々の濃度の銅イオンを添加して、37℃、CO_2インキュベータ-中で24時間反応させた後、生成された脂質過酸化物をthiobarbituric acid reactive substances法により定量し、易酸化性を求めた。同時にLDLおよび血中のビタミンE含量を高速液体クロマトグラフィー法によりα-tocopherolとして定量した。活動期の異型狭心症例では血中のHDL-コレステロール値とアポ蛋白A-I値の著減が見られ、LDLの易酸化性が証明され、血中およびLDLのビタミンEの含量の低下が見られた。これらの異常は異型狭心症の活動性が鎮静した治療後には著明に改善され、正常者と差を認めなくなった。アポA-I値の著減はHDL-コレステロールの組成を変え、その抗動脈硬化作用を低減させていることが想定された。冠動脈攣縮の病因の1つとしてLDLの易酸化性と抗酸化物質、ビタミンE含量の低下が深く関与していると考えられ、これには更にHDL-コレステロールの量的および質的異常も関係しているものと思われた。なお、これらの異常は不安定狭心症例においても顕著にみられた。
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