培養ラット大動脈平滑筋細胞のグルコース輸送活性におよぼすグルコースとインスリンの効果を検討した。10%牛胎仔血清で継代培養した細胞をPBSで洗浄後、種々のグルコース濃度(0〜25mM)の無血清培地に培地交換し24時間培養を続けた。その後、細胞を洗浄し種々のグルコース濃度(0〜25mM)の無血清培地で一定時間培養を続け、1μCiの2-deoxy-D-〔1-^3H〕glucoseを含む37℃のOmMグルコースの無血清培地を1ml加えグルコース輸送活性を測定した。細胞を無血清培地で合計49時間培養後、0分、2.5分、5分、10分、15分のグルコース輸送活性を測定すると、培地中のグルコース濃度に関係なく糖取り込みは直線性であり、グルコース濃度に関係なく濃度依存性に糖取り込みを増加させ、この効果はグルコース濃度が低値であるほど大であり最大で基礎の3倍を示した。この結果より、培養血管平滑筋細胞はグルコースを枯渇させることによりインスリン感受性糖輸送担体の細胞膜への移行が亢進し、インスリン感受性が高まることが推測される。また、インスリン様成長因子(IGF-I)によっては糖取り込みは変化せずIGF-Iは糖輸送促進効果を有しないと考えられた。培地中のグルコース濃度を培養途中で0mMまたは25mMから5.5mMに変化させると培地交換後8時間まではグルコース輸送活性はほぼ完全に5.5mMのグルコースに依存した値に回復するが、これ以上の培養時間ではそれぞれ5.5mMグルコースの場合よりも増加あるいは低下した。長時間のインスリン添加によりインスリンのグルコース輸送活性促進作用は消失し、desensitiza-tionによる機序が考えられた。これらの成績より培養平滑筋細胞のグルコース輸送活性はその環境のグルコースおよびインスリン濃度に影響を受けることが明らかとなった。
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