Dopamine(DA)の血管に対する伸・縮作用に対する機序は複雑であり、殊に体静脈に対する効果は明らかにされていない。当教室においては全循環充満平均圧を用い、イヌ体容量血管を収縮せしめることを、かつ、イヌ摘出股動・静脈にて、DAの動脈収縮作用はα_1受容体を、静脈はα_1とα_1受容体と介して収縮せしめていることを明らかにしている。 今回、摘出イヌ股動・静脈を用い、DAの股動・静脈収縮作用が静脈にて弱いことが示唆されたため、DAの収縮作用が何らかの機序によって修飾されていないか否かに検討を加えた。 (1)α_2刺激剤clonidine(CL)は静脈を収縮せしめたが、EDRF阻害剤、L-NA前処置にて、このCLによる収縮反応は増強した。しかし、CLは動脈を収縮させることなく、また、L-NA前処置にても収縮反応は発現しなかった。(3)DAは動・静脈を用量依存性に収縮せしめ、L-NA前処置にて、この動・静脈収縮作用は有意に増強した。(4)内皮を除去した動・静脈に対して、DAの収縮作用は増強し、L-NA前処置によって、この収縮作用に変化はみられなかった。(5)α_2N遮断剤であるyohimbine(YOH)処置後、DAの静脈収縮作用は抑制されたが、追加投与したL-NAにて、DAのこの静脈収縮作用に変化は生じなかった。一方、動脈において、DAによる収縮作用はYOH前処置にて、また、YOHにL-NA追加投与にて変化を認めなかった。以上の成績とすでに報告(イヌ摘出股動・静脈において動脈は主としてα_1受容体を、静脈はα_1とα_2受容体を介して収縮)している成績から、(1)動脈、静脈のいずれも内皮α_2受容体を介してEDRFを遊離せしめること、(2)DAは内皮α_2受容体を刺激して、EDRFを遊離せしめ、静脈にてはDAのα_2受容体刺激による収縮効果がこのEDRFの作用にて拡張的に修飾されていることを明らかにした。
|