研究概要 |
1.心臓の虚血再灌流傷害の成因としての活性酸素ラジカルとカルシウム過負荷との関係を明らかにするため,安定な活性酸素である過酸化水素でウサギの心臓を灌流し,^<19>F-NMRで検出可能なカルシウム指示薬である5F-BAPTAを用いて細胞質内フリーカルシウム濃度([Ca^<2+>]_i)を測定した。[Ca^<2+>]_iは過酸化水素投与前の200-300nMより投与後800-900nMまで上昇し,ラジカル心筋傷害におけるカルシウム過負荷の関与が示唆された。今後は,活性酸素ラジカルによるカルシウム上昇の機序について検討していきたい。 2.糖尿病心が虚血再灌流障害に対して耐性を持つか否かは未だ議論の余地がある。また,糖尿病心におけるラジカル心筋傷害に関する報告はほとんどない。我々は,糖尿病心が過酸化水素に対し耐性を持つことを発見し,これが糖尿病心の虚血再灌流傷害に対する耐性に関与している可能性を示唆した。さらに,過酸化水素で糖尿病心を灌流し,^<31>P-NMRにより高エネルギーリン酸の変化を観察すると,ATPの温存や解糖系中間代謝物(Fructose 1,6-bisphosphate や Glucose 6-phosphate 等)の蓄積の減少など代謝上の改善も認められた。解糖系中間代謝物の蓄積は解糖系阻害の存在を意味する。今後,ラジカル心筋傷害における解糖系阻害の役割に焦点をあて,糖尿病心のラジカル耐性獲得の機序について検討していきたい。
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