研究概要 |
1.雄性、雌性及び卵巣摘出雌性家兎の大動脈を摘出,アセチルコリン,A23187投与によるEDRF(NO)刺激分泌,ニトログリセリン投与による内皮非依存性刺激反応には三群間に有意差を認めなかった。SOD及びNO合成酵素阻害剤L-N^G-methyl-arginine(L-NMA)投与によるEDRF基礎分泌反応は雌性家兎のみが他の二群より有意に大きく,NO分泌反応の性差が認められた。 2.雄性及び雌性家兎に,各々普通食,2%コレステロール含有高脂肪食を10-15週投与,動脈硬化病変と血管反応性の変化を検討した。血清脂質は高脂肪食負荷で上昇したが性差を認めなかった。動脈硬化病変は摘出胸部大動脈では高脂肪食10週群では雌性家兎が有意に雄性より軽徴であったが,15週群では性差は小さくなった。アセチルコリン,A23187による胸部大動脈のNO刺激分泌反応は高脂肪食負荷期間に応じて順次低下し,性差がなく,ニトログリセリンによる反応には各群間で変化がなかった。SOD及びL-NMA投与によるNO基礎分泌反応は普通食群で雌性が雄性に比し有意に大きかったが,高脂肪食負荷により低下し性差を認めなくなった。 3.家兎の摘出脳底動脈において,SOD及びL-NMA投与によるNO基礎分泌反応及び後者のL-arginineによる弛緩回復を認めた。 4.ラット摘出大動脈においてSOD及びL-NMA投与によるNO基礎分泌反応,アセチルコリン投与によるNO刺激分泌反応の存在を確認し,キナーゼII阻害剤KN93前処置時の反応性の変化を認めた。 以上より,家兎大動脈を中心に,NO分泌反応には性差が認められ,動脈硬化病変形成とNO分泌の変動に関係があることが示唆された。家兎脳底動脈及びラット大動脈にもNO分泌反応が認められたが,反応性に脈管差,種差の存在が示唆された。キナーゼIIのNO分泌反応への関与が示唆された。今後、疾患モデルラット(SHR等)を用いた検討及び,反応生成物である,NO及びL-citrullineをGriess法,イオン交換カラム法にて測定し,細胞レベルのメカニズムを検討したい。
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