遺伝子発現を介した抗不整脈薬の作用機序に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670604
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 神谷 香一郎 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (50194973)
• 研究分担者: 外山 淳治 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (20023658) ; 児玉 逸雄 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (30124720) ; 神部 福司 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (00211871)

研究概要

本年度の計画では、心筋細胞の初代細胞の系の確立とアミオダロンの投与法の違いによるイオン電流に対する影響の差を明らかにすることになっていた。初代培養の心筋細胞の作成については順調に成果が出ている。生後24時間以内のラットより心臓を取り出し、心室筋細胞を単離し長期培養中の活動電位や膜電流の変化をパッチクランプ法を用いて観察した。培養2週間後の細胞を5日目の場合と比較すると、活動電位持続時間は約50%短縮し、Ca電流密度は減少してその不活性化は促進された。また一過性外向き電流の電流密度は増加しそのイオン選択性も変化した。これらの結果から、培養新生児ラット心筋細胞はin vivoと同様なイオンチャネルの発育・分化を遂げることが明らかになった。アミオダロンの心室筋のカリウム電流に対する急性作用と慢性作用の違いについて検討した。アミオダロン慢性投与群ではItoは約52%減少し、IKは約60%減少したが、IK1には有意な変化は得られなかった。アミオダロンの急性投与によりIKは減少しそのKD値は9.8μM(n=5)であったが、ItoとIK1には有意な影響をあたえなかった。その結果より、家兎にアミオダロンを投与すると投与方法の違いにより心筋K電流に対し異なる作用を示すことが明らかになった。AM経口投与時の再分極遅延による臨床的薬効は急性投与とは異なるイオン機序によることが明らかになった。cDNAプローブの作成については困難を究めており、当初クローンKチャネル(Kv1.2,Kv1.4,Kv1.5)のmRNAに特異的なcDNAプローブの作成を試みたが、家兎心筋におけるこれらのmRNAの塩基配列が未だ決定されていないため充分なプローベは未だできていない。

研究成果

• [文献書誌] Kamiya K,Cheng J,Suzuki R,Iwata H,Kodama I and Toyama J: "Effects of chronic treatment with amiodarone on the electrophysiological properties of single rabbit ventricular myocytes." Environmental Medicine. 36. 159-162 (1992)
• [文献書誌] Kamiya K,Cheng Kodama I,Toyama J: "Acute effects of amiodarone on action potentials and ionic currents in single rabbit ventricular myocytes." Environmental Medicine. 37. 179-182 (1993)
• [文献書誌] Kodama I,Suzuki R,Kamiya K,Iwata H and Toyama J: "Effect of long-term oral administration of amiodarone on the electromechanical performance of rabbit ventricular muscles." Br.J.Pharmacol.107. 502-509 (1992)
• [文献書誌] 神谷香一郎、児玉逸雄: "第I群抗不整脈薬(基礎)" CORONARY. 10. 255-266 (1993)
• [文献書誌] 神谷香一郎: "新しい抗不整脈薬アミオダロン、その他-アミオダロンの心筋電気生理学" 心電図(Japanese Journal of Electrocardiology). S2. 44-62 (1992)
• [文献書誌] 神谷香一郎(分担): "抗不整脈薬の基礎と臨床 山田和生(監,春見建一,有田真,外山淳治(編) 犬山カンファランス.不整脈研究の進歩(講演集 1986-1991)" ライフメディコム, 415 (1992)
• [文献書誌] 神谷香一郎,外山淳治: "不整脈 杉本恒明,矢崎義雄,泰江弘文(編)(ハンディ版)" 中山書店, 455 (1993)