研究概要 |
16週令のSHRとWKYにおいて、心、腎、副腎、大動脈においてAT1受容体サブタイプmRNAの発現測定し比較検討した。大動脈以外の各臓器におけるAT1受容体サブタイプmRNAの発現、すなわちAT1A mRNAとAT1B mRNAとの発現量およびその割合には、SHRとWKYで有意な差はなかった。大動脈ではSHRにおいてAT1Bの発現が有意に少ない結果が得られた。 次にSHRにおいて降圧治療による心肥大の退縮と、左心室におけるAT1受容体サブタイプmRNAの発現との関係を検討した。1週間AT1受容体拮抗薬であるTCV-116 1mg/kg/日を投与すると、左心重量には変化を認めなかったが、AT1受容体発現はAT1AもAT1Bも有意に減少した。SHRをACE阻害薬であるdelapril 30mg/kg/日,TCV-116 2mg/kg/日,hydrochlorothiazide 5mg/kg/日とhydralazine 30mg/kg/日により1ケ月間治療を行った。3剤とも血圧を同程度に減少させた。一方、左心室重量はhydrochlorothiazide・hydralazine投与群ではvehicle control群と比較して変化は認めなかったが、delapril投与群およびTCV-116投与群では有意な左心室肥大の退縮を認めた。しかし、AT1受容体サブタイプmRNAの発現、すなわちAT1A mRNAとAT1B mRNAとの発現量およびその割合は、いずれの治療群もvehicle control群と比較して変化を認めなかった。以上の結果より心肥大の退縮に先だってAT1受容体の発現が変化する可能性が示された。 副腎におけるAT1受容体は、delapril1ケ月間の投与によりAT1A,AT1B共に有意に減少した。一方、TCV-116投与では副腎のAT1受容体は変化を示さなかった。また、non-RIによる副腎のin situ hybridization histochemistryでは、副腎皮質球状層に強いAT1mRNAの発現を認めた。 以上、AT1受容体は、各病態、治療、臓器において異なる発現様式を呈する事が明らかになった。
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