心筋細胞ではジストロフインはどの様に発現するのかは不明である。そこで我々はラツト新生児の培養心筋において、心筋ジストロフインをモノクロナール抗体を用いて免疫染色し、ジストロフインの発現様式を検討した。培養2日目の初期にはジストロフインは核周囲にのみ認められた。7日後は核周囲だけでなく細胞質の一部にも認められ、2日目と比べて濃く染色された。14日目には細胞膜まで細胞全体にほぼ均一に染色された。この所見は骨格筋でのジストロフインの発現様式と似ていた。次に、この培養心筋細胞を用いてアドリアマイシン心筋障害を作成し、ジストロフインの変化を検討した。アドリアマイシンを投与すると培養心筋細胞が拍動している状態、すなわち壊死する以前の時点ですでにジストロフインが欠損することが認められた。このようにジストロフインの欠損によりアドリアマイシン投与時の心筋がなお脆弱になり障害されやすくなることが考えられる。
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