研究概要 |
本研究課題の予備実験中に、米国のアイオワ大学より麻酔下のWistar京都ラットと高血圧自然発症ラット(SHR)の腰部交感神経の電気活動が、SHRのみで副腎神経電気活動が高インスリン血症時に増加することが報告された(Morgan DA et al.Am J Physiol 264:R423-R427,1993)。しかし、腎交感神経活動は増加しておらず、高インスリン血症で交感神経の活動性は増すが、臓器特異性があることが示唆された。また、血圧、心拍数も変化しなかった。抵抗血管支配の交感神経として腎交感神経の活動が亢進しなかったことは、麻酔の影響が関係していることが考えられ、われわれは従来の計画に従って、無麻酔下での腎神経活動の記録を継続した。ペントバルビタール麻酔下にSHR(14〜16週齢)の左後腹膜腔内で腎神経に銀線電極を固定。右大腿動脈(血糖測定用採血)、同静脈(ブドウ糖注入)、左総頸動脈(血圧測定)および左外頸静脈(インスリン注入)にカニューラを挿入して固定した。1〜2日後に無麻酔・無拘束下に血圧、心拍数、腎神経活動を記録しながら、他のSHRの50%血漿・生理食塩水に溶解したアクトラピッドを3.7mU/kg/minの速度(上記論文を参考にした)で120分間持続注入した。血糖を前値に維持するために、10分毎に血糖を測定しながら50%グルコース溶液を適宜速度を変え持続注入した。しかし、この正常血糖、高インスリン血症下で血圧、心拍数、腎交感神経活動には有意な変化はなかった。血圧、心拍数が変化しなかったことは、本受験条件下では、インスリンの血管拡張作用等による圧受容体反射を介した腎交感神経活動への影響はなかったものと考えられ、調圧神経の除神経は行わなかった。これらのことから、高インスリン血症自身による中枢を介した腎交感神経活動への作用もなかったものと考えられる。 抵抗血管支配の交感神経活動に及ぼすインスリンの作用については更に検討が必要である。
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