抵抗血管平滑筋小胞体(SR)は、細胞質へのCa供給だけでなく、細胞質内Ca濃度の上昇に伴いCaの吸収を行う細胞内Caの緩衝器官として重要な役割を果たしている。昨年度、高血圧自然発症ラット(SHR)の抵抗血管SRは、高血圧発症前、発症後ともに血管収縮に伴う細胞質内Ca濃度の上昇を強く緩衝していることを報告した。今回、Ryanodine(Ry);SR Ca channel openerおよびThapsigargin(Tg);SR ATPaseinhibitorを用いてSRのCa貯蔵能を減少させることにより、幼若期および成熟期のSHRにおける抵抗血管SRの細胞内Ca緩衝作用の弛緩期に及ぼす影響、さらに、高血圧発症・維持にいかなる役割を果たしているかを検討した。 5週齢(幼若期)および10週齢(成熟期)のSHRおよび同週齢のWistar-Kyoto Rat(WKY)の上腸間膜動脈第1-2分枝(直径200μm)の輪状灌流標本を用い、等尺性張力を測定した。まず、10mMカフェイン(Caf)および40mMカリウム(K)反応を観察後、10μMRyまたは1μMTg投与後のこれらの反応の変化を比較した。(1)血圧は幼若期では2群間に差はなく、成熟期のSHRで血圧が著明に上昇していた。(2)CafおよびL収縮反応は、SHRで幼若期に比し成熟期で増加した。(3)K後の弛緩速度は幼若期、成熟期とも差はなかった。(4)RyまたはTgにより両群ともCaf反応は著明に減少した。(5)RyまたはTgによりK反応後の弛緩速度は遅延したがその程度はSHRでWKYに比し幼若期および成熟期とも大きく、またこの遅延の程度は幼若SHRに比べ成熟SHRで大であった。 弛緩期におけるSHRのSR細胞内Ca緩衝作用は、幼若期、成熟期ともWKYに比し大であった。さらに、SHRでは幼若期に比し成熟期でSRのCa貯蔵能、細胞外からのCa流入および弛緩期の細胞内Ca緩衝作用が増加した。それゆえに、SHRのSRは、血圧上昇ととも細胞外からのCa流入に伴う細胞内Ca上昇を強く緩衝することで高血圧の進展を抑制する重要な細胞内Ca緩衝器官と考えられた。
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