長時間の心筋虚血に数回の短時間の心筋虚血が先行する場合、先行する虚血によるischemic preconditioningにより心筋の虚血再灌流傷害が軽減するとの報告がみられる。本研究ではこのようなischemic preconditioningの虚血再灌流障害軽減効果に注目し、虚血再灌流不整脈、虚血再灌流による左心機能低下に対するischemic preconditioningの効果を検討している。Langendorff法により灌流したラット心を用いた、虚血再灌流モデルにて研究を行ない、現在までの以下の成果を得た。 1.虚血性不整脈 灌流ラット心を2回の短時間(5分)の虚血にさらし、その後30冠動脈結紮を行ないischemic preconditioningによる虚血性不整脈に対する抑制効果を検討したところ、虚血性不整脈の軽減を認めた。 2.再灌流不整脈 灌流ラット心を2回の短時間(5分)の虚血にさらし、その後に10分間冠動脈結紮、再灌流を行ないischemic preconditioningによる再灌流不整脈に対する抑制効果を検討したが、本モデルでは再灌流不整脈の軽減は認められなかった。 3.虚血再灌流による左心機能低下 灌流ラット心を用い、2回の短時間(5分)の虚血の後、20分間のglobal ischemiaおよび20分間の再灌流を施行し、左心室機能の回復およびCK releaseなど生化学的な心筋傷害指標などに対する効果を現在検討中である。 今後は、ischemic preconditioningによる虚血性不整脈抑制の機序(さらに虚血再灌流による左心機能低下軽減効果が得られた場合にはそれも含め)を検討する。
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