研究概要 |
1.研究経過:心臓手術時に得たヒト右心耳(0.5〜1cm^2大)より1.5×1.5×8mm大で線維化や石灰化の無い比較的正常に近い良質な短冊状条片を摘出し、標本とした。その標本を単一庶糖隔絶法により3室実験槽に固定後、膜電位固定アンプを用い、ある電位レベルへ膜電位固定を行った上で細胞内Na^+イオン活性(a_<Na>)の実測を試みた。残念ながら、当施設で得られるヒト心房筋標本は、基礎心疾患やその病的状態のばらつきが多いため、単一庶糖法では充分な物理的且つ電気的な隔絶が困難な例が多く、電位固定が不安定となり、データーの正確性に不安が残った。それでも、行った十数回の実験結果より、膜を脱分極すればa_<Na>は減少するとの結果が、ほぼ確認された。この結果は論理的にも,また他種動物で検討された実験結果とも矛盾しない。一方、当施設ではa_<Na>の実測方法は確率されており特に問題はないが、膜電位固定の方法に今後解決しなければならない多くの問題が残っている。データーの記録・分析には、パソコン(アップル7100/66AV)を中心にした周辺機器を活用し能率は向上している。 2.平成6年度の結果:比較的安定した膜電位固定を行って得たヒト心房筋標本のa_<Na+>は、静止膜電位レベル(平均-44mV)では6.9mM,膜電位が約-60mVでは7.9mM,膜電位が約-80mVでは8.8mMと増加する傾向が認められ,この結果は理論的にも矛盾はない。すなわち、通常膜電位が浅い病的心筋で測定したa_<Na>値は、小さく評価される可能性が示唆され,今後考慮しなければならない点であろう。しかし、本実験で膜電位固定に用いた単一庶糖隔絶法には、依然として膜電位制御に問題があり、その信頼性に欠ける点があることを否定することは出来ない。これらの問題点解決は今後の課題にしたい。
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