研究概要 |
(1)外科的に切除されたヒトの頚動脈切除標本を用いて、動脈硬化巣内に存在するマクロファージのサブセットとその組織内分布に関する免疫組織学的検討を行なった。その結果、動脈硬化巣内に分布しているMφには、平滑筋に近接した粥腫の辺縁部に集中し、近接したT細胞と相互作用をしながら、HLA-DR陽性の抗原提示細胞として機能しているであろうサブセットと、粥腫の中心に近い部位に集中し、PDGF-B鎖、GM-CSFなどのサイトカインの産生や脂質や死細胞の貧食機能を主体としたサブセットが存在し、単球からの分化段階が違うMφが異なった分布様式で集積していることが明らかとなった。 (2)動脈硬化巣内に浸潤している炎症細胞が除去される機構の解明を目的として、T細胞のアポトーシス誘導の過程におけるマクロファージの役割について検討した。末梢血から単核球を分離し、SEA,SEB及びPHA存在下に培養すると、3日目以後にTリンパ球のアポトーシスが誘導されたが、単離したTリンパ球をSEB存在下に培養してもアポトーシスは誘導されなかった。一方、あらかじめ、単球由来のマクロファージをGM-CSF存在下で培養し、これとTリンパ球をco-cultureするとアポトーシスが誘導されたことから、マクロファージがT細胞のアポトーシスの誘導に対して重要なシグナルを与えていることが示唆された。また、このシグナルは細胞間の直接の接触によって伝達されており、いくつかの接着分子の関与が中和抗体の投与によって明らかとなった。
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