研究概要 |
平成3年度に旭川医科大学附属病院で分離されたMRSA87株(85%がコアグラーゼII型)について,プラスミドプロファイルと薬剤感受性試験を行った.プロファイルはAからGの7パターンが得られ,制限酵素Eco R1で切断後の電気泳動でもそれぞれの違いが明瞭であった.薬剤感受性試験は9薬剤について行ったが,ミノサイクリン(MINO)で感受性株と中等度耐性株に分かれ,分離株数の多いプロファイルAの株はMINOの感受性パターンの組み合わせによりさらに分類が可能と考えられた.それにより病棟におけるMRSAの分布をみると,一つの外科病棟にプラスミドAでMINO感受性の株の集積を認めた.また,プラスミドAでMINO耐性の株はもう一つの外科,脳外科,皮膚・泌尿器科病棟から多く分離され,プラスミドCの株は耳鼻科病棟だけから分離された. 以上の成績に基づき,平成4年度以降,当附属病院検査室で分離されたMRSA401株を保存し,さらにその検索を進めることとした.保存株の一部についてプラスミドプロファイルを調べたが,プロファイルA株の流行からプロファイルB株へと流行の変化が認められた.二つの病棟では環境から分離された株のプロファイルを調べたが,多くは患者からの分離株とは異なるプロファイルを示した.また,同じ新生児室内でも同一プロファイルの株の流行は少なく,入室する患者の異なる時期には別のプロファイルを示した. ほかに,鹿児島大学医学部小児科からMRSA60株の分与を受け,そのプラスミドプロファイルを調べたが,いずれの株も当大学の株とは異なるプロファイルを示した.鹿児島大学小児科でmec-hypervariable region (hvr)の多形性に基づくタイピング成績とプラスミドプロファイルを比較してみると,hvrタイプで最も多い株(36)のプロファイルは28株(78%)で一致した.しかし,ほかのhvrタイプの株のプロファイルは多様であった. 今後は,パルスフィールドゲル電気泳動パターンとの比較も試みる予定である.
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