小児の危険な不整脈を明瞭にする目的で有意の症状を呈する上室性不整脈、心室性不整脈及び頻拍症に対し心筋代謝、電気生理及び心筋病理の面から検討した。 上室性頻拍における電気生理学的検討では、慢性反復性上室性頻拍のメカニズムとして異所性心房性頻拍の頻度が高く、発作性上室性頻拍では房室回帰性頻拍の頻度が高かった。また、慢性反復性頻拍が発作性頻拍より心機能低下、有意心筋病変の合併率が高かった。しかし、心筋病変は発作性頻拍にも高率に合併しており、両者とも心筋炎を示唆する病理所見には乏しかった。従って、上室性頻拍では、心筋病変は主に二次性の要因が強く、適切に頻拍を予防することで心筋症様変化への進展を予防できるものと思われた。 心室性不整脈では、特発性心室性不整脈の発生起源頻度は右室が左室より高く、発生起源の差と臨床像との間には有意の相関は見いだせなかった。電気生理学的検査では洞結節異常や房室結節異常の合併を約12%に認め、心室性不整脈は心室のみならずより広範囲の刺激伝導系の異常をも合併する例のあることが明らかになった。基礎心疾患として約15%に心筋症、心筋炎が考慮された。組織病変の程度と薬物に対する反応性の検討で、組織学的に得られた%fibrosisの高い例は薬物投与に対する反応性が劣っている傾向を示したが、統計学的には有意ではなかった。適切な治療により、心室性不整脈の組織病変の更なる進行が予防できる可能性が高いと思われた。
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