高フェニルアラニン血症と重篤な神経症状を呈するジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)欠損症の日本人症例3例について、その遺伝子解析を行なった。その結果、まず症例1においては点変異によるアミノ酸置換が検出された。このアミノ酸置換をもつDHPR蛋白をin vitroで発現させたところ活性が認められず、本変異が酵素活性を低下させる病因であると考えられた。患者はこの変異のホモ接合体、両親はヘテロ接合体であった。次に症例2および3では、DHPRmRNAの低下を認めた。症例2においては、mRNAのスプライス異常を見い出した。このスプライス異常によって隣接する2つのエクソン間に152塩基の挿入を認めるとともに、DHPRmRNAの著明な低下が観察された。この挿入塩基内には終止コドンが存在しており、その結果mRNAの安定性が低下しているものと推定された。患者とその同胞でやはりDHPR欠損症の患者はこの変異のホモ接合体で、正常なDHPR活性をもつ母親はこの変異のヘテロ接合体であった。その第3例においてはDHPRmRNAの著明な低下を認めたが、その蛋白翻訳領域に塩基変異は認められなかった。したがって、5'上流の遺伝子発現調節領域、3'側の非翻訳領域、あるいはイントロン内になんらかの異常があるものと考えられた。症例2および3における変異部分を詳細に検討するためには、まず正常DHPR遺伝子のゲノム構造を知る必要がある。そこで、ヒトゲノムライブラリーよりクローンの単離をおこない、正常DHPR遺伝子のゲノム構造を解析し、エキソン/イントロン境界の塩基配列を決定した。
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