研究課題/領域番号 |
05670651
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
小児科学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松原 洋一 東北大学, 医学部, 助教授 (00209602)
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研究分担者 |
三上 仁 東北大学, 医学部, 助手
鈴木 洋一 東北大学, 医学部, 助手 (80216457)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | ジヒドロプテリジン還元酵素 / 遺伝子変異 / フェニルケトン尿症 / ビオプテリン / PCR |
研究概要 |
ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)欠損症は、高フェニルアラニン血症と脳内神経伝達物質の低下をひきおこすビオプテリン代謝異常症の代表的疾患である。私達は本症を有する日本人3症例における遺伝子解析を行なった。症例1ではDHPRmRNAの発現量は正常とほぼ同じであった。本例では、Trp(36)→Arg変異がホモ接合子として認められ、発現実験によって病因遺伝子であることが証明された。症例2および3ではmRNAの発現量が低下していた。症例2のmRNAについて逆転写-PCR反応を行なったところ、正常より大きなcDNA断片が増幅された。cDNAの塩基配列決定によってエキソン3とエキソン4の接合部に152塩基の挿入が認められ、その中に終止コドンが存在した。この終止コドンの存在によってmRNAの安定性が低下するため、その量的な変化を招いたものと考えられた。挿入配列部分を含むDHPR遺伝子のゲノム構造の解析から、挿入塩基配列はイントロン3に由来し、挿入配列に隣接してA→G置換の存在することが判明した。この置換はmRNAスプライシングのドナー部位に類似した配列を生じるため、上流に存在する潜在的なアクセプター部位を活性化し、その結果このイントロン部分を新たなエキソンとして認識したものと考えられた。このようにイントロンの一部を島状にエキソンと認識するような変異は他に報告例が極めて少なく、興味深い症例と思われる。症例3でもmRNA量が低下していたが、増幅されたcDNA断片に塩基置換は認められず、mRNAの発現や安定性を低下させる何らかの異常が、非翻訳領域もしくはイントロン内に存在すると推定された。本研究において、DHPR欠損症の東洋人症例における遺伝子変異が初めて明らかにされ、多様性に富むことが示唆された。また、これまでに報告されていないゲノム構造の一部を明らかにすることができ、今後の遺伝子変異解析にとって有用と考えられる。
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