研究概要 |
つくば市周辺で施行された平成1〜4年度の小児成人病健診受診者約5,000名のうち高コレステロール血症と診断された約350名の小児とその家族を対象とし、家系調査を行い、家族性複合型高脂血症を診断する。家族性複合型高脂血症家系の家族構成員について、(1)Southernブロット法でアポリポ蛋白AI-CIII-AIV遺伝子領域のRFLPsハプロタイプを分析し、(2)PCRを用い、アポリポ蛋白CIII遺伝子のTNR多型を明かにし、家系毎にこれらの遺伝マーカーと高脂血症との連鎖の有無を検討しその遺伝的成因を解析した。さらに、家族性複合型高脂血症による高脂血症の発現時期について検討し、本症小児の臨床的特徴について分析した。 日本では、同胞を経時的に経過観察できた家系から、10歳から家族性複合型高脂血症による高脂血症が認められた。また、家族性複合型高脂血症小児では、高脂血症(IIa型またはIIb型)の他に、肥満及び脂肪肝の合併症が認められた。さらに、日本では高コレステロール血症小児を発端者とした場合、遺伝性高脂血症のうち約43%が家族性複合型高脂血症で、その頻度は家族性高コレステロール血症の4倍以上認められた。アポリポ蛋白AI-CIII-AIV遺伝子領域のRFLPsやTNR多型の分析から、この遺伝マーカーと高脂血症が連鎖していると考えて矛盾がない家系が4家系、矛盾がある家系が2家系、4家系はnot imformativeな結果であった。現時点では本症の遺伝的原因は不明であるが、遺伝的質性の存在が示唆された。 また、長期的に経過を観察できた症例では、運動療法及び食事療法で薬物療法を併用せずに、肥満度の改善とともに高脂血症が改善した。小児家族性複合型高脂血症では、高脂血症の発現に肥満が憎悪因子として働いている可能性が推測された。
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