27名の本態性高血圧あるいは正常血圧小児を対象に、血小板Caポンプ受容体数、尿中Ca排泄、血小板Ca濃度、血漿補正Ca濃度、赤血球膜Naポンプ受容体数を測定し、次の成績を得た。 1)血小板Caポンプ受容体数が10fmol/mg protein以下の低値を示した小児が4名存在した。うち2名が高血圧、2名が正常血圧であった。 2)4名中3名が強い高血圧家族歴を持ち、遺伝素因との関連が示唆された。 3)血漿補正Ca濃度は高血圧群が低値を示したが、有意差はなかった。 4)血小板Ca濃度は血小板Caポンプ受容体数と有意の負の相関を示した。 5)Caポンプ受容体数は高血圧群で低値であったが、有意差はなかった。 さらに、上述の血小板Caポンプ受容体数が低値を示した小児、及び希望者の計6名に対して市販経口Ca剤(ワダカルシウム)をCaとして1日600mgを1〜3カ月間投与し、投与前後で各因子の変動を検討した結果、次の成績を得た。 1)(統計学的な有意差はなかったが)補正血漿Ca濃度、尿中Ca排泄量及び赤血球膜Naポンプ数が増加した。 2)血小板Ca濃度、血小板Caポンプ受容体数及び血圧はほとんど変化しなかった。 以上より、小児において6細胞内外のCa代謝が血圧調節に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、Ca経口補充により血小板Ca受容体数や赤血球膜Naポンプ受容体数が増加したことから、十分なCa摂取によりCaポンプ異常や膜Na輸送異常を改善できる可能性も示唆され、今後、成人本態性高血圧症を小児期から予防するための方策を立てる上で、大きな成果と考えられる。
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