1:従来リンパ球に存在するとされていたFDPaseは、リンパ球分画に混入する単球に由来することを酵素活性および遺伝子レベルで明にした。このことを利用して酵素活性による保因者診断の改善を行った。 2:単球のFDPase-cDNAの塩基配列は蛋白翻訳領域においては肝と腎のそれと同じである。 3:FDPase欠損患者7名の単球によるFDPase-cDNAの分析。7名のうち2名の姉妹でのみFDPase-cDNAが得られた。姉妹はいずれも全く別個の2つの変異(Gの挿入とTからCへの変化)によるcompound heterozygotesと判明した。Gの挿入は母方の祖母由来でこの変異により332個のFBPaseのアミノ酸配列が321番目より変化し332番目で終わる短縮した酵素蛋白になる。TからCへの変異は父親由来で325番目のアミノ酸がヴァリンからアラニンに変化する。 4:大腸菌での発現実験の結果。正常の単球、肝臓由来のクローン、Gの挿入を伴うクローン、TからCへの変化を伴うクローン、いずれもほぼ同じ大きさだった。FBPase酵素活性は、正常の単球、肝臓由来のクローンともに約10units/mg protein前後であった。Gの挿入を伴うクローンでは活性はほとんど認められなかった。しかしTからCへの変化を伴うクローンについてはほぼ正常の活性が認められた。 5:まとめと今後の展望。単球により肝臓の代用としてcDNAの分析が可能なことを証明した。また、世界で初めて、FDPase欠損症の変異遺伝子(Gの挿入)を明らかにした。発現実験でも確認した。この変異遺伝子(Gの挿入)は、今までの成績では、非常に頻度の高い遺伝子変異と予想される。単球によるFDPase-cDNA分析でなくても、体遺伝子での検出も可能である。
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