研究概要 |
今年度は、これまで酵素診断してきたβ-ケトチオラーゼ欠損症(3KTD)患者17例の臨床像、酵素蛋白欠損機構、および遺伝子変異について検索を進め、相互の関連性について検討した。 1)臨床像:我々が酵素検索した17例をふくむ30例の患者について、アンケートと文献から調査した。30例のうち、死亡3例(10%)、発達遅滞7例(23%)であった。発症前の発達障害は30例中1例のみであった。このことは本症は本質的には後障害を予防できる疾患であることを示唆した。 2)酵素蛋白欠損機構をパルスチェイス実験の結果から、蛋白量、安定性、分子サイズによって7つのクラスに分類した。現在のところ蛋白欠損パターンと症状の重症度の間にははっきりした関連性は認められない。 3)遺伝子レベルでの病因解析を進めた。本症の世界初例(カナダの2例)について病因を解明した。1例は、イントロン11の5'-スプライスサイトの点変異によるスプライシング異常の結果、4-base挿入が起こっていたホモ接合体であった。もう1例は、開始メチオニンコドンの点変異をもつホモ接合体であった(Human Mutation,2:214-220,1993)。またこれまで本症の遺伝子変異はheterogeniousであることがわかっている。遺伝子変異と臨床症状を比較したところ、明らかな相関は認められなかった。すなわち点変異のみの症例で死亡例があったり、エキソンスキップのような重篤な変異を持ちながら正常生活をしている症例や無症状の症例もあった。 4)本症の遺伝的背景をより簡便に行えるイムノブロットを応用した保因者診断法を解立した(Pediatr Res,33:429-432,1993)。
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