研究者らはまずジストロフィンのメッセンジャーRNAの血球細胞における検出について研究を行ない、白血球中に極く微量にしか存在しないジストロフィンのメッセンジャーRNAを逆転写PCR法を用い検出する方法を確立した。そして、白血球中にジストロフィンメッセンジャーRNAが発現することを確認するとともに、発現しているジストロフィンのメッセンジャーRNAが筋型と脳型の両方のジストロフィンのメッセンジャーRNAからなっていることを明らかにした。 そこで、この末梢血液のジストロフィンのメッセンジャーRNAが患者の診断の材料となりうるか否かを明らかにするため、実際の患者で末梢血液のメッセンジャーRNAを調べた。その結果、Becker型筋ジストロフィーの1例でジストロフィン遺伝子のエクソン13の3'端の塩基点突然変異を明らかにするとともに、その異常が2次的にメッセンジャーRNAの成熟にも異常を来たしていることを世界で初めて明らかにした。 さらに、ジストロフィン遺伝子にレトロポゾンの挿入された症例においても末梢血液のジストロフィンのメッセンジャーRNAを解析することにより、スプライシング時にエクソンがスキップされることを明らかにし、レトロポゾンの挿入変異によりスプライシングに異常が生じることを世界で初めて明らかにした。これは、エクソン内の配列の異常がスプライシングに異常を来たした最初の自然変異例として世界中の研究者から大きな注目を集めた。 このように本研究では、世界的業績を次々と挙げることが出来、今後さらに大きく発展するものと期待される。
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