研究概要 |
初年度計画に沿って順調に進展しており、この間に得られた知見は以下のとおりである。 巨核芽球細胞株の増殖に対するサイトカインの影響:無血清methylccllulose法による培養で、無蛋白培養株L8057Y5はIL-3、IL-6、leukemia inhibitory factor(LIF),erythropoietin(EPO)に対して添加濃度依存性にコロニー数の増加を認めた。GM-CSFに対しても反応は見られたが、前4者ほど濃度依存性が明らかではなかった。またIL-11には、検討した濃度内では有意の増殖刺激は認められなかった。血清培養株L8057も1%FBSの存在下で、IL-3,IL-6,LIFにより軽度のコロニー形成の促進が見られた。 巨核芽球細胞株におけるサイトカインmRNAの発現:RT-PCR法により、L8057Y5株のみに、IL-6とLIFのmRNAが再度確認された。しかしNorthernblot法では検出感度以下で、その発現量は微量であろうと思われた。 サイトカイン受容体遺伝子の解析:Northern blot法でIL-6受容体、gp130,EPO受容体のmRNAが、またRT-PCR法でIL-3受容体mRNAの発現が認められた。 以上のように、サイトカインの添加実験から、正常巨核球系細胞の増殖を促進するとされるもののうち、IL-3,IL-6,LIF,EPO,GM-CSFが本白血病細胞株の増殖も促進すること、またそれらのサイトカインに対する受容体遺伝子が構成的に発現していた事実より、この増殖促進作用がそれぞれ固有のシグナル伝達機構を介している可能性が示唆された。さらにIL-6,LIFについては、無蛋白培養株にのみ発現が見られたことから、無血清培養という条件下での自己増殖との関わりが考えられる。これらの点を第2-3年度にさらに詰めて行きたい。
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