MSG肥満マウスを作成しICR系マウスを対照としてインスリン分泌動態の解明を行った。マウスを膵潅流の手法を用いて、各種薬物に対する膵臓のインスリン分泌動態を調べた。本研究で、MSG肥満マウスではグルコース負荷において糖消失速度の低下を認めアルギニン負荷試験では高インスリンの生じることが示された。しかし、膵潅流系ではMSG肥満マウスと対照に差はなかった。しかし、膵臓重量あたりではアルギニン刺激に対するインスリン分泌が過剰反応を示すことが示された。これまでの報告と考えあわせるとMSG肥満マウスで見られる高インスリン血症は、視床下部腹内側核の障害による副交感神経と交感神経系のバランスの異常によるものと考えられた。この点を考慮に入れ、MSG肥満マウスの脳の形態的な特徴も併せて検討した。そのためN-methyl-D-aspartate receptorのantagonistであるDextromethorphanをMSGを投与する直前に皮下注しマウスの体重、鼻肛門長、尾長を測定した。飽食時と24時間絶食時に血糖とインスリン、さらにInsulin-like growth factor-1(IGF-1)を測定した。この実験によりDextromethorphanを投与することにより高インスリンは改善しないが低体長は改善した。またInsulin-like growth factor-IもDextromethorphanを投与することにより低下が軽減された。さらにDextromethorphanによる脳の保護領域をみるために脳の組織学的検討を行った。視床下部弓状核の神経細胞の障害がDextromethorphanにより軽度改善が見られた。この改善を見た神経細胞がGRF分泌細胞であることが推測されるが、免疫組織化学的に証明することが今後の課題であろう。一方潅流液中の一酸化窒素代謝産物のとシトルリンの測定を行った。潅流液中の一酸化窒素代謝産物とシトルリンはHPLCにてピークを呈さなかった。よって、今までの報告に反し、アルギニン負荷時のインスリン分泌には一酸化窒素は関連していないと考えられた。
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