研究概要 |
血液疾患のないダウン症候群およびtransient abnormal myelopoiesis(TAM),急性白血病などを有するダウン症候群、13trisomy、22-trisomy,multiple trisomy,Fanconi症候群などの末梢血液、骨髄穿刺液について、電子顕微鏡による微細構造の観察と、DNA、ミエロペルオキシダーゼ、血小板ペルオキダシ-ゼ、糖化合物などの微細構造上の局在とその変化について研究した。血液疾患のないダウン症候群では血液細胞の微細構造上の異常はなく、ミエロペルオキシダーゼ陽性顆粒数も正常であった。ダウン症候群のTAMの芽球は血小板ペルオキシダーゼ陽性で巨核球系の特徴をもつが、同時に、顆粒球系細胞を思わせるミエロペルオキシダーゼ陽性の顆粒、好塩基球様顆粒、フェリチンを含む赤芽球の顆粒などもあり、TAMの芽球は多能性幹細胞であることをうかがわせた。芽球自体、核のDNAの局在は、急性骨髄性白血病や急性巨核球性白血病の芽球に類似していた。ダウン症候群に発症する巨核球性白血病の芽球はこのTAMの芽球に類似した特徴を持っていたが、多方面への分化の程度は減少していた。 22trisomyの好中球はミエロペルオキシダーゼ陽性の顆粒が有意に少なく、13trisomyではこの一次顆粒が多い傾向にあった。Multiple trisomyの症例ではnuclear pocketが10%の顆粒球にみられ、時に、Auer様の小体を有するものもみられた。Fanconi症候群では、myelodysplastic syndrome(MDS)のない患者では血液細胞の形態に異常は少なかったが、MDSを伴ったものは核の異常がつよく、顆粒球系細胞の76%,リンパ球の21%にnuclear pocketがみられた。白血病化するとこのような核の異常は消失した。 染色体異常症では、光顕上異常がみられなくとも、電顕上、細胞化学上、軽い異常がある。血液学的に異常がおきると形態異常は強くなり、染色体正常者とは異なる特異な異常をきたすことが分かった。
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