研究概要 |
今年度は,次の4項目について興味深い成果が得られた。 1.チアノーゼ性の先天性疾患には,種々の肺動脈形態異常(低形成,狭窄,閉鎖)がみられるが,従来,その診断は心血管造影によってなされてきた。我々は,超音波検査法による新たな肺動脈形態評価法を考案した。本方法による診断と心血管造影所見に極めて良好な一致を認めた。(研究発表1)今後,正常新生児,未熟児,病児の肺動脈系の発達についての検討を予定している。(研究発表1) 2.左心拍出量と脳,腎,腸管への血流量の推移を出生後早期より経時的に観察した。出生後1時間以内の左心拍出量は胎児の約2倍の増加を示したが,脳,腎,腸管への血流増加は明らかでなかった。むしろ,出生後24時間以降の左心拍出量が減少する時期に,脳,腸管血流の増加を認めた。今後,動脈管内血流の影響,皮膚,筋肉の表在性血流変化などについて検討が必要である。(研究発表3) 3.新生児において,出生後早期より5〜7日まで大動脈系(上行大動脈,弓部,左鎖骨下動脈と動脈管の間,下行大動脈)の径変化について検討した。この間,左鎖骨下動脈と動脈管の間の部分のみ,24〜72時間で一過性の狭小化がみられたが,他の部に明らかな変化はみられなかった。これらの成績は,新生児における大動脈縮窄の診断に有用な基礎データとなるうる。(研究4) 新生児期の肺静脈血流速波形の出生後変化をドプラ法を用い検討し,出生後8時間以内では連続血流速波形がみられることを明らかにした(研究発表2)
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