研究概要 |
1.胎児の心形態,機能評価に関する研究;本年度中に,胎児心不全2例,不整脈7例,先天性心疾患5例を診断しえた。心機能評価法として,臍帯静脈血流,三光弁逆流の定量化,右室,左室の駆出率,面積,径短縮率評価が胎児心不全の早期診断に有用であることを示した. 2.分娩様式の循環系に及ぼす影響に関する研究:成熟新生児を対象とし,経膣分娩と帝王切開による分娩の間に,循環系指標に与える影響に差があるかを検討した。また,臍帯動脈血のepinephrine,norepinephrine濃度を測定した.カテコラミン濃度は,いずれも経膣分娩児において高値を示した。一方、左心拍出量,臓器血流には分娩様式による差を認めなかった.この結果は,分娩様式による循環系への影響に差がないことを示す. 3.肺動脈絞扼術後の近位部挟窄の成因に関する研究:従来、本病態は絞扼部のバンドのづれ(Slipping)によっておこると考えられていた。我々は,肺動脈絞扼術前,後そして平均11.8カ月にわたり,経時的に心エコー検査を施行し,バンド部および左,右肺動脈近位部径を計測した.初回と最終検査時の挟窄部径/同側肺動脈遠位部径比は有意に減少し,本病態の進行性を示したが,挟窄部径はむしろ増大した.この結果は,本病態が術中のバンドの位置,特に左,右肺動脈分岐部に装着された場合,バンドに接触する肺動脈近位部の成長が遠位部に比し阻害されることが主な要因であることを示唆する.
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