研究概要 |
本研究では(A)人ニーマンピック病タイプC(NPC)の病因解明と(B)NPC原因遺伝子クローニングの為の基礎実験及び(C)ラット胎児遺伝子治療の試みを行った。 (A)人NPCの病因は依然不明であるが、NPCで外因性コレステロールのエステル化のプロセスに障害が存在し、コレステロールが細胞内に蓄積することが見いだされた。また正常細胞で細胞内カルシウム濃度を変化させると、細胞内にコレステロールが蓄積する事も報告されている。以上より我々は人NPCの病因解明の為、細胞内カルシウム代謝を検討した。 (1)細胞内へのLDLの取り込みに際し、培養正常細胞で細胞内カルシウム濃度が約2倍に上昇する対し、NPC細胞では50%に抑制されていた。(2)カルシウムチャンネルアゴニスト投与により、培養NPC細胞内カルシウム濃度が有意に上昇し、コレステロールのエステル化障害も同時に改善されることが見いだされた。以上細胞内カルシウム代謝異常がNPCに存在し、本症の病態生理に大きく関与していることが明らかになった。 (B)人NPC細胞のcell lineの樹立と選択培地の作成を、人NPC原因遺伝子のクローニングを行う為の基礎研究として行った。(1)人NPC線維芽細胞を用いSV40にて、transformしcell lineを作成した。(2)上記cell line化した細胞培養液中にHMG-CoA reductase inhibitor(Lovasutatin,Simvastatin)を投与すると、NPCクローン化細胞の感受性が亢進し、日令5-7で濃度依存性に細胞が死滅する事を見いだし、同inhibitorが人NPC病因遺伝子クローニングのスクリーニングに有用な手段になることを見いだした。 (C)人アリルサルファターゼA(ASA)遺伝子挿入レトロウイルスベクターの開発とラット胎児遺伝子治療の試み。(1)人ASAcDNAをMFGベクターに挿入し、Iate infantile type MLD線維芽細胞にtransform。ASA活性の著しい上昇を認めることができた。(2)amphotropic ASAベクターを日令15,16,17のラット胎児の羊膜静脈及び羊水中に注入。生後1日で脳、肝臓、腎臓等各臓器をホルマリン固定後、人ASA抗体を用い免疫組織染色を行いASA蛋白の発現を検討したが、現時点では有意な発現を認めることができなかった。しかしながら本ベクターは培養系で有意に発現しており、今後さらに種々の改良を加え検討する予定である。
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