研究概要 |
平滑筋には,同一の遺伝子よりRNAのスプライシングの差により生ずるSM1(204Kd),SM2(200Kd)の2種類の平滑筋ミオシン重鎖(MHC)遺伝子と,NMA,NMB(200Kd)の2種類の非筋MHC遺伝子が存在する. 実験1).ウサギ胎仔(29日齢)の動脈管(DA),大動脈(AO),肺動脈(PA)の外膜と内膜を取り除いた中膜サンプルより,グアニジン・イソシアン酸/酸-フェノール法を用いてRNAを抽出した.プローブは,平滑筋MHC遺伝子からは,RNAのスプライシングの差によって生じたSM1,SM2遺伝子の塩基配列の異なる部分を選んで70bpのSM1プローブを,非筋MHC遺伝子の頭部の一部からは,166bpのNMBプローブの2種類を作成した.これら2種類のプローブと抽出したRNAを用いてS1マッピング法により平滑筋および非筋MHC遺伝子の発現を調べた.実験2).同じサンプルより平滑筋細胞を30日培養後,db-cAMP(90mug/ml)を投与し,さらに3日間培養後,同様にRNAを抽出し,S1マッピング法を施行した.実験1)より胎生29日令のDAにおける平滑筋のSM2遺伝子は,同時期のAO,PAに比べて多く,生後DAでは急速にSM2の減少がみられるが、AOとPAでは生後急速にSM2の増加が認められた.実験2)において,培養平滑筋細胞にdb-cAMP(90mug/ml)を投与し,3日間培養後RNAを抽出し,S1マッピング法を施行した結果,AOでは平滑筋の4種類の遺伝子(SM1,SM2,NMA,NMB)の発現が増加したにも関わらず,DAとPAではその発現が減少した.以上のことより,動脈管は大動脈とは形態的,組織的,機能的に異なるだけでなく,平滑筋の遺伝子発現レベルでも異なっていることが示された.今後,更にこの違いがどのような機序で生ずるか等に関して研究する必要がある.
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