性ホルモンは小児の身長発育にとって重要な因子であるが、その作用として下垂体におけるGHの合成、分泌への影響、肝臓におけるIGF-1およびIGF-1結合蛋白合成の影響、骨細胞の増殖、成熟における直接的な影響が考えられている。骨の増殖、成熟における性ホルモンの作用については、血流を介するいわゆる内分泌的な機序が考えられるが、近年ではむしろ局所における傍分泌的、自己分泌的な機序の重要性が示唆されている。そこで、本年度は骨の増殖、成熟に関与する軟骨細胞自体に男性ホルモンであるテストステロンを活性型のジヒドロテストステロンに転換する5alpha-レダクターゼ活性および男性ホルモンを女性ホルモンに転換するアロマターゼ活性が存在するか検討した。方法は生後約2週齢の日本白色種家兎より助軟骨を採取し、成長軟骨細胞および静止軟骨細胞に分けて初代培養し各々の活性を測定した。アロマターゼ活性は成長軟骨細胞、静止軟骨細胞のいずれにも存在したが、静止軟骨細胞に比較し成長軟骨細胞で有意に高値を示した。一方、5alpha-レダクターゼ活性も軟骨細胞に存在することが明きらかとなったが、成長軟骨細胞と静止軟骨細胞で活性に有意差は認められなかった。アロマターゼ活性は8週齢についても同様に測定したが、2週齢に比較し8週齢では高値を示した。以上より、性ホルモンは局所で傍分泌的、自己分泌的な機序でも作用する可能性が示唆され、成長軟骨細胞でアロマターゼ活性が高値を示すことより、女性ホルモンが骨の増殖、成熟により関与していることが推測される。
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